秋になると、何故かアカデミックな気分になるのは、亀だけで
ありましょうか?何故アカデミックな気分になるかというと、
アカデミック=教養、教養=文化、文化=文化祭、秋になると
あちこちの学校で文化祭が開催されるので、秋は文化だよね。
と刷り込まれてた青春時代を送った亀でありました。
で、普段は、文化と教養とアカデミックな事には全く縁が無い
亀ですが、この秋の季節になるとそんな気持ちになって来るの
でありました。
で、その普段は持ち合わせていない教養を少しでも身に付ける
べく、みなとの丘公園に在る神奈川近代文学館に向かいます。
その目的は、同館で開催されている「井伏鱒二展」を観に行く
為であります。

亀の敬愛する作家のひとりである開口健が、生前親しくされて
いた作家に井伏鱒二がいます。洒脱なエッセイを執筆しながら、
小説では、広島原爆を題材にした「黒い雨」という社会派小説
や、誰でも一度は小学校の教科書で読んだ、「山椒魚」という
小説が有名であります。亀は、井伏鱒二のお堅い小説よりも、
ユーモアに富んだエッセイが好きなので、そちらの視点でみた
井伏鱒二を詳しく知りたいと思い、「井伏鱒二展」に向かうの
でありました。
さて、この井伏鱒二ですが、亀が興味を持ち展示会を観に行く
もうひとつの理由があります。それは、「トラウマ」に関する
事であります。
人間は、思春期に世の中の色々な事を知っていき、その中には
理解出来ない事や理不尽な事を知る事もあります。それを乗り
越え、人は大人となっていくのであります。が、不幸にして、
それを乗り越えられない場合も時としてあります。
その結果どうなるか?大抵の人はグレます。不良となるのであり
ます。これを世間一般的には反抗期といいます。
前述しましたが、大抵の方のその殆どは、小学校の国語の時間で
井伏鱒二の「山椒魚」を教科書で知る事となります。
実はその「山椒魚」こそ、グレるかどうかの試金石としての重要
なテキストでもあるのです。
それは、何かというと、その「山椒魚」の小説のくだりの中で卵
を抱えた蝦が出てきます。「山椒魚」では「その卵を抱えた彼は」
と書かれています。大抵の良く勉強が出来る生徒は、ここで質問
するのだそうです。
「センセ~、卵を抱えた蝦がなぜ彼なんですか?」
大抵のセンセ~答えられない。
ここで生徒は、このセンセ~大した事ないじゃんと思ってしまう
のであります。また、そのセンセ~は、無駄な努力であるのです
が、「そのほうが響きが良いでしょ!文学的表現なのです」等と
訳の分からん説明をします。
ここで生徒は、この先生とはコミュニケーションが取る事が出来
ないとなってしまいます。また、気の短いセンセ~は、しつこい
生徒のおかげでこの先授業が進まないと困るので「そんな些細な
事に拘るな!」と怒る事となります。
これでは、学級崩壊にもなり兼ねなません。
かくして、この事がトラウマとなった人間はかなりいるらしいの
であります。
ところで、そんな事に全然気が付かない程、教科書を斜め読みを
していた亀は、そんな質問も出ない平坦な学校環境にも救われて
すくすくと成長し、中年となって何故か井伏鱒二の本に嵌ったの
であります。そして、何年か前に、タイトルもずばり「井伏鱒二」
という本に出会いました。
その本の内容は、多くの著名な小説家が井伏鱒二を語る評論本で
ありました。その中で予想していなった発見があったのでした。
例えていえば、温泉に行ったら自分の病気に関する効能が3つも
あるのを見つけた時。または釣りをしていて魚が釣れ、その釣り
糸に魚以外に何かが絡んでいて引き上げたらなんと、誰かが間違
って海に落した釣り竿が上がって来て、その竿が自分の竿よりも
高い釣り竿だった時。要は大変得した気分になる本に巡り合った
のであります。
それは、その中に井伏鱒二センセ~の対談があって、話題は最大
の失敗は何んですか?という質問に対して、その「山椒魚」の蝦
の話題となっていたのでした。センセ~読者からよく質問が来て
窮していたらしいのでした。
井伏鱒二センセ~も、実は、書きながら気にはなっていたらしい
のでありました。でもセンセ~、それまでは、蝦は、雌雄同体と
思っていたので、まあ、いいかとそう書いてしまったのだそうで
あります。
とはいえ、どうも気になっていたので、井伏鱒二センセ~、日頃
から馴染みにしてる寿司屋のおやじに、蝦は、雄と雌がいるのか
と聞いたのだそうです。
すると、その寿司屋のおやじさん「さあ、わからない」と答えた
そうです。
当時は、「彼」は一般的に使う言葉だが「彼女」はあまり一般的
な言葉では無かったのでいいかぁ~となったらしいそうです。
さて、この話を聞いた私の知人の女性は、やはり「山椒魚」で、
人間関係躓いた人でありました。
で、その知人は約2秒間の沈黙の後、怒りを込めて大声で発した
言葉が、「寿司屋に聞くな!寿司屋も寿司屋だ!!」でした。
その沈黙の2秒間、彼女の脳裏には、小学校時代の教室の風景や
センセ~の顔、納得出来ない自分の姿がぐるんぐるんと音を立て
廻っていたのでありましょう。
さて、そのような井伏鱒二、今回は特別展という事で、この辺り
の事も、もう少し詳しく分かるかもしれないとの事で、山手の丘
を上がって港の見える公園の神奈川近代文学館を目指します。
みなとみらい線が開通したのに併せて、元町駅から港の見える丘
公園迄、エレベータとエスカレータが出来たおかげで、急な坂道
を上がらなくても、丘の上迄上がる事が出来ます。このおかげで、
雙葉やフェリスの女学生も足が逞しくなる心配をしなく済む事で
ありましょう。
エレベータを上がると、花々が綺麗に植えられたアメリカ山公園
となります。辺りには、金木犀の香りが漂います。
ああ~、良い季節になりました。

こちらも花が綺麗な横浜市イギリス館。

で、大佛次郎記念館。

横浜ベイブリッジがよく見えます。

そして、その奥に在る神奈川近代文学館。
井伏鱒二の生い立ちや、生原稿、交流のあった作家達との書簡や
対談の記録等が展示されています。亀は、今回初めて知ったので
ありますが、戦後の娯楽映画の多くが、井伏鱒二の小説を原作に
して製作されたものでした。亀が幼い頃、午後3時台のテレビで
放映されていてよく観た多くの映画がそれでありました。
その代表的なものとしては「駅前シリーズ」があります。
で、お目当てのものも見つける事が出来ました。
展示品の中に、現代作家処女作集という昭和28年に刊行された
出版物の原稿がありました。
その生原稿の用紙の欄外に「この小説は、山椒魚の生態を部分的
に無視しているところがある。」と書いてありました。
井伏センセー、やっぱり相当気になっていたのでしょう。
そして、「寿司屋に聞くな!寿司屋も寿司屋だ!!」の寿司屋の
名前が、どうやら「山新」という寿司屋のようでありました。
どうやらと書いたのは、展示の説明に「井伏鱒二が、蝦にオスと
メスがあるのかと気になり、尋ねた寿司屋が山新であった。」
とは書いてはいなかったからであります。でも、どうやらその様
だろうと亀が思ったのは、井伏鱒二が愛した地元の料理屋の写真
と名前が展示されていて、井伏鱒二が白木のカウンター席に座り、
寿司ネタの並ぶ陳列ケースの向こうには、寿司職人のいで立ちを
したお店のご主人の姿が写っているのでありました。
井伏鱒二が悩み、亀の知人の女性が小学生の頃に経験した理不尽
の基の情報が、時を越えて見つかったのでありました。
これだけで、井伏鱒二の特別展示に来たかいがありました。
さて、展示と共に、もうひとつ。
井伏鱒二に関した講演会イベントが開催をされていて、こちらも
拝聴させて頂きました。
井伏鱒二ファンの作家の絲山秋子さんによる「リズムと余韻」。
井伏鱒二の漢詩の現代語訳についてのお話です。井伏鱒二という
作家が、漢詩のユニークな現代語訳に於ける言葉のリズムと母音
の計算された使い方について、詳しく説明されていました。
五・七・五は休符があり、そのリズムとグルーブと余韻が静かな
情景を作り出しているのに対し、八音が入ると休符無しで一気に
畳み掛ける陽気な派手さがあるとの事。
具体例として、「厄除け詩集」という本の一節が挙げられました。
「阿佐ヶ谷アタリデ大ザケノンダ」。
八音が入り、母音のアという音が全体の流れを作っています。
これに対して、もしも、「荻窪アタリデ焼酎ノンダ」となると、
同じ八音ながら、母音と子音が織り交じってしまい、一気に畳み
掛ける陽気な派手さが薄く、凡庸に聞こえてしまうとの事。
実際に、井伏鱒二の作品を朗読しながらの説明には、なるほどと
感心してしまいました。
因みに、「厄除け詩集」というこの本。亀は、今まで読んだ事が
りませんでした。
早々に手に入れた亀でありました。
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Today’s topic is ‘ He has with eggs ‘
Is it just me or does autumn make you want to get cultured?
In Japan, many schools hold 'cultural festivals' in autumn.
Historical studies, musical performances, dances and plays
are presented. In Tsurumi, a festival called the ' Uchina
Festival ' is also held. People from Okinawa perform
various arts. I call it a cultural festival for adults.
Now, such is the autumn of culture. I went to the Kanagawa
Museum of Modern Literature in Minato-no-Mieru Oka Park in
order to acquire a little culture. The purpose was to go
and see the Ibuse Masuji exhibition being held there.
Ibushe Masuji is famous for his novels Black Rain, about
the atomic bombing of Hiroshima, and Sansyouuo, which we
all read in our primary schools textbook at least once.
However, I prefer his humorous essays to his novels.
I wanted to find out more about his essays. And I had
another goal in mind. It's about 'unreasonableness'.
People learn many things about the world during adolescence.
Some of these things are unreasonable. People overcome them
and become adults. Unfortunately, however, there are also
cases where they can't overcome them. What happens then?
They become distrustful of adults. This is generally called
rebellion.
' Sansyouuo '. This novel is the touchstone of whether we
distrust adults.
In one passage of the novel, there is a shrimp holding eggs.
It then says: " He holds that eggs ". A good student asks
the question. 'Teacher, why is the shrimp with the egg him?
' But most teachers can't answer. Then the students think
that the teacher is not much of a teacher. Some teachers
make a futile effort. They say things like, "It's a
literary expression." Here students think that they can't
communicate with this teacher. The short-tempered teacher
may also be annoyed that the student is wasting time here
and not moving on with the lesson, so teacher will get
angry and say, "Don't get hung up on such thing!" .
I've heard that many people have become distrustful of
adults because of this.
I didn't encounter that ordeal because I didn't read the
textbooks properly. I also grew up in a flat educational
environment where such questions were never asked. Then,
in my middle age I became fond of Ibushe Masuji's essays.
One day I read a book called Ibushe Masuji. In it, in an
interview with Ibushe Masuji, an interviewer was asked, '
What is your greatest failure? ' He replied with a
' sansyouuo ' shrimp.
He was troubled by the questions he received from many
readers. He also wondered whether he should write 'he' or
'she' while writing the novel. But he thought that shrimps
would be hermaphrodites, so he wrote ' he who is a shrimp
with eggs '. However, Ibushi Masuji was still concerned
about this after the publication of his novel, and asked
the owner of his familiar sushi restaurant if there were
male and female shrimps.
The sushi chef said, " Well, I don't know ". At the time,
the word 'she' wasn't a common word, so he decided it's
okay.
Now, the woman I knew who heard this story was also a
' sansyouuo ' and distrusted adults.
And when she finished listening to the story, after about
two seconds of silence, she angrily and loudly said.
' Don't ask the sushi chef ! The chef should answer
properly too !.'
And on that day, I was also able to find what I was looking
for two. One is Among the exhibits was a manuscript of a
publication from 1953 called The First Collection of
Contemporary Writers. In the margin of the manuscript, it
says: ' The novel partly ignores the ecology of the
sansyouuo It's say. The another one is the name of the sushi
restaurant I found familiar with was 'Yamashin'. I was able
to acquire a new culture.
That's all Thank you.





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